杖道とは

杖道の概要

杖道は2人1組で行う武道で、長さ128cmの白樫の杖を持つ仕杖(しじょう)と木刀を持つ打太刀(うちたち)で形(一連の攻防の動作)を行います。
仕杖は、形の流れの中で打ち込んでくる打太刀の木刀を変幻自在に受け流し、機に応じて勝ちます。杖道の妙趣はその自由自在に変化する業にあり、その技法の大要は伝書に以下のようにうたわれています。

突かば槍 払えば薙刀 持たば太刀 杖はかくにも はずれざりけり

今日では杖道はその修行過程において、精神の修養と心身の鍛錬を行うことを第一義としており、その目的は精神修養にあります。
杖道を修行することで得られる効果のうち、主要なものは以下の5つが挙げられます。

・礼儀、信義、誠実、忍耐などの精神が養われる。
・身体を強健にし、活動を敏活にする。
・姿勢や態度が良くなる。
・判断力、決断力が養われ、自信をもってことに当たることができるようになる。
・対人関係が良くなり、社会生活に必要な協調性が養われる。

 

業(わざ)と演武

杖道の業は形であり、杖を持つ仕杖(しじょう)と木刀を持つ打太刀(うちたち)の2人で行います。7歩程度の距離から近づき様々な攻防を行いますが、最終的に仕杖が勝ち1つの業が終了します。
演武は様々な場面で業を披露することを差し、1回の演武で業を5本または7本行います。演武を行う前後には、神座及びお互いに礼を示す礼法を行います。

 

段位及び称号

全日本剣道連盟の地方代表団体(各都道府県剣道連盟)に加盟している団体では、全日本剣道連盟が発行する段位を授受することになります。ただし、一級以下(段外と呼ばれます)は各都道府県剣道連盟が発行する級位を授受します。
段位の仕組みは剣道及び居合道と同様で、初段から八段まで存在します。また、各段位には最低修行年数が定められており、これも剣道と同様です。
称号は高段者にのみ受審資格(注)があり「錬士」「教士」「範士」の3つが存在します。
範士が最高位の称号であり、教士八段にのみ受審資格が与えられています。

注:正確には受審資格と受審条件が存在し称号により異なります

 

大会と試合

杖道の大会は全国各地で行われており、各大会には遠方からも多数の参加者があります。
ほとんどの大会に参加制限はないため様々な大会で自分の実力を確認できます。それぞれの大会では、段位別に試合が行われます。
杖道の試合は2組で対戦を行います。審判員は3人で審判を行い、試合者の演武の優劣を判定します。審判員はそれぞれ、赤・白の旗を持っており、演武終了後、より優れている方の旗を挙げます。3人の審判員のうち2本の旗が挙がった方が勝者となります。

【杖道大会の例】
・大阪杖道大会(大阪市)
・広島杖道大会(広島市)
・関西杖道優勝大会(大阪市)
・全日本杖道大会(全国各所)

 

古流(神道夢想流杖術及び併伝武術)

神道夢想流杖術は、江戸時代初期に飯篠長威斎家直を流祖とする天真正伝香取神道流の道統七代に当たる夢想権之助勝吉によって創始されました。夢想権之助は、1600年頃、江戸に出て著名な剣客と数多く試合をし無敗を誇っていましたが、ある時、宮本武蔵との試合で十字留にかかり、退くことも押すこともできずに敗れました。
それ以来、夢想権之助は修行に専念したが、宝満山(福岡県)の宝満菩薩に参籠した際、夢枕に童子が現れ「丸木をもって水月を知れ」と告げられたといいます。
夢想権之助はこれを元に工夫を重ね、ついには宮本武蔵の十字留を破ったと伝えられています。その後、神道夢想流杖術は黒田藩(福岡県)を中心に伝承され、近代に入り全国に広まりました。
神道夢想流杖術には杖術以外にも剣術、短杖術など以下の併伝武術を伝承しています。

[併伝武術の例]
・神道流剣術
・内田流短杖術
・一心流鎖鎌術

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